前の記事で、映画製作スタッフというか制作部のギャラ・概要をお伝えしましたが、今回は仕事内容を中心にご紹介したいと思います。
制作部の業務
実際にどのような感じで取り組んでいたかを、過去のエピソードを介してお伝えします。
※尚、途中で出てくる会話等に関しましては、当時の記憶を元に脚色しておりますので、予めご了承ください。
運転
駆け出し制作部にとって、業務の7割は運転です。
マーチから4トン車・ハイライダー・散水車etc…北海道から沖縄まで、全国各地でなんでも乗ります。私も先輩方による荒療治で、直ぐにマスターしました(笑)

エノテカ君ってマニュアル車の運転いける?

いえ、教習所以来乗ってないので厳しいです

あ、そうなんだ。了解!
レンタカー屋

ご予約ありがとうございます!

...

ん?どうしたの?

いや、マニュアルは乗れないって...(涙)

あ、そうなんだ。んじゃ、30分練習したら出発しようか

マジっすか…(しかも雪道)
食事手配
後に別業界に転職して実感したのですが、この業界の食に対する執着心は異様に強いです。
しかも撮影現場の食費に関しては全て製作費に計上されます。
朝~晩の食事が全て経費でOKってことです!これって普通に考えるとすごい厚待遇ですよね?
よって我々制作部には、朝一のコーヒーから撮影の合間につまむ茶菓子、昼~夕飯まで、常に充実させ、趣向を凝らし、まさに食のエンターテイナーであることが求められます。
実際に現場の胃袋を掴める逸材は、出世が早いです。
また、作品予算によって前後しますが、ロケ弁の単価は税込840円(お茶付き)が相場です。
これから、〇〇時まで昼食休憩にしまーす!
お弁当どうぞ!肉かお魚か、どっちがいいですかー?

肉

肉

肉

肉食ばっか!足りない…(ドキドキ)
車、人止め
文字通り、一般の車両や歩行者がカメラに映り込まないよう、通行を止める行為です。
工事現場よろしく。誘導灯を振り回しながら一方的にお声がけしていきます。
急いでる方々からしたら迷惑なことで、反感を買う事もしばしば。

すみませーん!今から本番いきますので、少しお待ちください!

え!?なに?

本番-!!

???

カットー!ありがとうこざいました!

何なの!?
備品管理
制作部の備品はカメラや照明ではありません。
撮影現場をケアする物として・養生資材・テープ類・灰皿・交通誘導用具・掃除道具・虫よけ・薬・お茶周りから調理道具まで、ロケ直前になると、まるで引っ越しでもするのかってぐらいの分量を車両に積み込みます。
慣れないうちは朝から晩まで、ひーこら言いながら作業します。
雨が降った日の積み込みなんかは最悪です(笑)

今日中に積み込みしなきゃ!

夜中までかかった…明日5時からロケなのに(泣)
ロケ予算管理
準備期間の行動費や、食事や宿泊手配、撮影スタジオやロケ地への支払い等、制作部はお金の取り扱いが非常に多い部署です。
仮払いは、上司の制作担当から現金で受け取るケースが多く、何十万円といった大金をしばしば手元に預かり自己管理をします。
業界ならではといいますか、ここら辺のスキームが大味なため、現金に関する価値観がマヒする人も多いです。

はい。エノテカ君。〇日までの行動費30万円ね。ここにサインしてね

はい。ありがとうこざいます
リサーチ、ロケハン
「ロケーション・ハンティング」
スタジオ以外での撮影地を探すことを指す造語であり、略称「ロケハン」と呼ばれます。ロケハンは制作部の花形の業務です。
自分の探してきた場所が作品になり、公開されて後世まで残る。
少々大袈裟を申し上げましたが(笑)センスが問われ、とてもやりがいのあるお仕事です。
脚本・台本を元に、まずは制作部が候補地を見つけてくることを「プレロケハン」といいます。その後、監督、カメラマン、照明・録音技師、デザイナー等の現場のメインとなるスタッフを候補地に連れて行くことは「メインロケハン」と呼ばれます。いわばメインロケハンは制作部のプレゼン会です。

太郎と花子の回想シーンか…湘南が舞台の作品だから、やっぱり江ノ島が抜ける場所がいいよなー
パシャっ

どうですか!?監督!

うーん、なんか違うんだよね...こう、なんかゴツゴツしててさ...崖?みたいな?

なるほどですね(が、崖…だと…!?!?)
撮影申請
正式に撮影候補地が決まった場合、そこが何かしらの施設であったり、公道にかかるのであれば「撮影申請」が必要です。
公道の場合は、管轄の警察署へ「道路使用許可申請書」の提出をして、許可が出れば撮影可能となります。
申請の受理までには数日間を要しますので、予め余裕を持って手続きをするのが望ましいです。

このシーンは公道で撮影するから、道路使用許可申請ね!〇〇署の申請期間は?

中三日です

え?今日出さないと間に合わないじゃん!今から行ける?

イエッサー!
挨拶まわり
ロケというのは、大抵どこかの地域や団体が関連します。正式な手続きを取ったとしても、周囲からの理解や協力がなければ、成り立ちません。制作部は、そういった世間と撮影隊をつなぐ架け橋の役割も担います。
地域の理解を得つつ、その土地・団体のルールを遵守することにより、撮影を円滑に進めることができます。

〇〇商店街で撮影するには、まず会長に挨拶しないとね

こんにちは。撮影のものですが、お肉屋さんの前でロケのご相談でして、企画書です

なるほどー。じゃあ〇〇さんにも伝えとくから、挨拶しといてくれる?

はい。ありがとうございます
協力団体のエンドクレジット掲載まとめ
作品のエンディングにズラーっと流れるアレですね。
撮影に協力いただいた企業、団体の名称やロゴを誠意を持って取りまとめ、編集チームに託すため、制作担当もしくはラインプロデューサーに提出します。
以上。撮影隊における制作部の立ち位置や業務内容が、何となくお分かりになりましたでしょうか?
長々と書きましたが、「映画・ドラマ制作部」のお仕事をご紹介させていただきました。
他にも制作部時代のおもしろ体験談等がありますので、また別の機会にお話しさせてください。